記録的豪雨、死者21人・行方不明54人に


大型の台風12号による大雨は、4日も近畿、中国地方など広い範囲で続き、奈良県上北山村で8月30日の降り始めからの雨量が1800ミリを超えるなど、紀伊半島を中心に記録的な豪雨となった。


 奈良、和歌山両県では土砂崩れで民家が流される被害が多発したほか、河川の氾濫も相次ぎ、読売新聞のまとめでは4日午後8時30分現在、9県で死者21人、行方不明者54人に上っている。台風被害では、死者・行方不明者98人を出した2004年の台風23号以来、最悪となった。


 奈良、和歌山、三重各県の要請を受け、自衛隊は4日未明から被災現場に部隊を派遣した。しかし、道路網の寸断や悪天候のため、救助活動は難航している。


 奈良県十津川村野尻では3日夕、熊野川沿いの村営住宅2棟が鉄砲水に押し流されて倒壊。同村職員の岡修作さん(33)とバス運転手の浦上圭三さん(33)、両家族ら計11人のうち7人が行方不明となった。救助された4人のうち、岡さんの妻美佳さん(36)が死亡した。


 さらに同村長殿でも4日、熊野川近くの民家と空き家の計2棟が崩土で流され、住人の男性(82)と妻(79)、近所の女性(90)と連絡が取れなくなっている。


 同村北隣の五條市大塔町では、家屋数棟が流され、1人が死亡、11人の行方がわからなくなっている。


 和歌山県田辺市伏菟野(ふどの)では4日未明、地滑りで6棟が倒壊。うち2棟にいた山本正江さん(69)が死亡、高校生を含む4人が行方不明となった。同県那智勝浦町では、寺本眞一町長の妻(51)と長女(24)が自宅周辺で濁流に流されたとみられ、行方不明になっている。


 鉄道網や道路網にも被害が相次いだ。那智勝浦町では、JR紀勢線那智川橋梁(きょうりょう)(長さ約40メートル)の橋桁が流され、江川橋梁(同約16メートル)もコンクリート橋脚が崩れた。また、奈良県十津川村熊野川にかかる国道168号の折立橋(同271メートル)も長さ90メートルにわたって流された。